見逃された?過剰に削られた? なぜ医院によって虫歯と診断されたりされなかったりするの?

「前に虫歯があるって言われたけど、今回は言われなかった」
逆に「虫歯はないと言われてたが、別の医院ではたくさん虫歯があるって言われた」
「歯科検診で虫歯と言われたが、歯科医院に行ったら大丈夫と言われた。大丈夫ってなに?」
「明らかに黒いのに治療やらなくていいの?」

このような経験がある方は多くいらっしゃると思います。この原因として大きく2つ考えられます。

一つ目は、虫歯も進行度や範囲によって段階があることが一般的に知られていないこと、です。

虫歯にも段階があることがあまり知られておらず、
虫歯がある→治療しなければいけない
虫歯がない→治療しなくてよく、気にしなくて良い
というイメージを持たれている方が多い印象です。

実際にはもう一つ、

虫歯があるけど今は治療しないという選択肢があります。

例えば高血圧や糖尿病では、血液検査における数値の結果により、明確に診断が決まります。しかし、高血圧と診断されない人の中でもギリギリセーフという人もいれば、低血圧の人もいます。高血圧の人の中でも、ギリギリ超えたくらいの診断であれば薬は飲まずに、生活習慣の改善などで様子を見たり、重症の場合はいくつも薬を飲んだりしますよね。
歯科においても、歯周病は明確に数値化できる検査がありますので、軽度、中等度、重度という診断によって、治療内容を変えていきます。
しかし、虫歯においてはそのように確立された明確な数値化による診断基準がありません。レーザーで虫歯の進行を診断する機械はありますが、必要のない歯まで削ってしまうリスクもあり、完全に信頼できるとはいえません。
したがって、虫歯の診断は歯科医師によって異なり、方針も異なります。
一般的には病気は、その専門学会の定めたガイドラインがあり、それに沿って治療を行います。歯科でも歯周病学会はそのようなガイドラインを設けています。しかし、虫歯についてはそのような周知されたものはなく、歯科医師や団体によって考え方が全く異なるということになります。   

虫歯治療の特徴として
①軽症の場合以外は、放っておいても自然に治ることはない。しかし、進行スピードは遅い場合がある。
②治療と言っても治るわけではない。虫歯になった部分を削って、代わりの材料を入れるだけ。健康な部分をかなり削る必要がある場合も多い。治療をすることで、かえって早く歯が失われてしまうリスクもある。

①と②を考えると、治療介入する時期が患者さんによって、そしてその虫歯の場所によって異なってきます。

注意が必要なのは、
歯科医師「虫歯は大丈夫ですね。(まだやる必要はないという意味)」
患者さん「ありがとうございます!(虫歯はないんだ!)」 
このような認識の違いがある場合です。
当院においてはもちろんご説明をしているつもりですが、なかなかうまくお伝え出来ていない場合もあるかもしれません。


そして二つ目は、虫歯をすべて把握するのは難しいことです。見ただけでは見える範囲しかわからず、レントゲンを撮ることでその範囲は広がります。しかしレントゲンは、保険上のルール、被曝について、を考えると、頻繁に撮るわけにはいかないため、どうしても発見が遅れることがあります。また、レントゲンでも詰め物や被せ物の下など見えない部分もあります。

当院では、ある確立された診断基準を用いて治療をするかしないか、判断しております。基準の中で継続してやっていくことで、歯科医師個人の経験も積み重なっております。

しかし、他の医院でそれを採用しているとは限らないため、齟齬が生じてしまうこともあります。

なかなか難しいところです。

 
 

【監修】
監修 太田純也

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